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「文化交流」って何?                サウジアラビア駐箚特命全権大使  遠藤 茂


総領事館の仕事の一つに、文化交流があります。

私は時折、考えることがあります。文化交流っていうけど、一体交流すべき「文化」って何なのだろう?何を交流するのだろうか?日本の伝統・現代文化をジュネーブの人たちに紹介することが交流なのか?今や毎年秋の恒例行事となった「日本文化月間」を盛り上げることが「文化交流」なのか?勿論それも重要な仕事のひとつです。

「文化」とは何か? 我々の多くの先達が様々な定義を行なってきました。百人に聞けば百通りの答えがあるでしょう。私は、次のような視点から「文化」というものを捉えてみたいと考えます。「文化」とは人間の「生き方・生きざま」である・・・と。人々の「生き方」には、 どれひとつとして同じものはありません。一つ一つに個性があります。そしてその一つの「生き方・生きざま」と他のそれとの打ち合いを「文化交流」と考えるのです。

個人の集合体としての「地域社会」にもユニークな「生き方」があります。国という単位での「生き方」もあります。更に国を超えた地域もあるでしょう。それぞれのレベルでの「生き方」の打ち合いが出てきます。これが私の考える文化交流です。

「生き方」と「生き方」の打ち合い・交流によって、自らの「生き方」が刺激を受け、洗練されていきます。また、打ち合う相手にも影響を与えていきます。文化の交流によって新たな「生き方・文化」が生まれてくることもあります。摩擦が生じることもあるかもしれません。「文化」は生きものだからです。

よく伝統文化を守るということが云われます。これは、自ら殻を作ってその中に閉じ籠ることと同義ではないと思います。積極的に外界の文化に触れ、触発を受け、洗練されていくということが大切ではないでしょうか。ある意味で、異文化間の緊張感は必要です。その接触の過程で、変わるもの、変わらないものの両面がでてくると思うのです。

最近、日本文化を代表する九谷焼についてこんな興味深い話を聞きました。多くの人々から「梅」や「赤富士」を描いて欲しいとの要望に絵付師は悩み苦心していたようです。それは濃淡を表すための透き通った赤が、従来の九谷焼にはなかったからです。悩み苦しんだ中で最新の技術を応用し、透き通った赤を出せるようになりました。その結果、伝統的なものの上に幅が出、様々な要望に応えられるようになりました。嘗ての伝統手法に固執し、殻に籠っていたら出来なかったことです。ここには伝統文化を守り、発展させようとする生き方と、新たな色合いを要求する需要者の生き方との間で、現代技術を介した打ち合いがあったといえるのではないでしょうか?

私は、ここジュネーブにおいて日本人とスイス人の双方が参加した形での文化活動を実現したいと強く希望しております。立案から実施までの全プロセスにおいて共同作業を行なう中で、日本人の「生き方」とスイス人の「生き方」の打ち合い・交流を行ないたいのです。そのような打ち合い・交流は言葉で言うよりはるかに難しいかもしれません。価値観の違い、言葉の違い、手法の違い等から来る様々な困難があり、多くの汗を流すことでしょう。しかしだからこそ文化事業を成し遂げた時の喜び・充実感はひとしおです。実は、そういった「喜び・充実感」は自分だけで味わうより、他の人と共有するときに、より深く味わうことができると私は思っています。そして、このような共同作業・交流の中にこそ、日本の人とスイスの人とのより強い絆が生まれると確信します。これこそが文化交流の醍醐味なのではないでしょうか。

今秋の「日本文化月間」は10月から11月にかけて実施されます。テーマは「異文化との融和」。私はこの「融和」をスイスの人との共同作業で表現したいと念願しています。今回、嬉しいことに、そのような共同作業が、「草木染め」展示を通して行なわれつつあります。今回展示される草木染めは自然との共生を表現する日本の伝統工芸の一つになっているものです。そしてその展示のために、ジュネーブの人たちが、染色の原料となる草木をスイスで採取を行なう予定になっています。採取はタイミングが重要であり、私たち素人が考えるほど簡単ではないといいますが、何とか日本・スイス双方の努力で日本の工芸作品を完成させようと準備が進められています。私は、ここにも打ち合いの場面が出てくると思うのです。そしてその結果生まれる作品の上に「融和」が表現されるものと期待しています。
ジュネーブでのこの共同作業が、どのような「草木染め」を表現してくれるか、私は今からその作品を心待ちにしています。



2004年7月31日
在ジュネーブ日本国総領事 遠藤 茂
(現 サウジアラビア駐箚特命全権大使)





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