Home
理事長挨拶
団体の概要
Special Interview
Activities
日本人会
blog
世界に向けて「日本の着物はどうあるべきだ」と考える必要もあります。
TraditionJAPAN Special Interview - 第20回
伊藤 政一 氏
aaa
ページ1234

 

矢作:お邪魔いたします。

伊藤:よろしくお願いします。

矢作:忙しいときにお邪魔いたしまして。

伊藤:いいえ、とんでもないです。もう本当にありがとうございます。

矢作:着物屋さんなさって何年ぐらい。

伊藤:18歳ぐらいからでしょうかね。

矢作:そうですか。

伊藤:うちの兄はぽっくり病で、私が18のときに亡くなったんです。それから、おふくろと私とできていますけども、ですから、実際、高校のときも手伝っていましたしね。

矢作:そうか、そうか。店を構えたというよりも、もうかかわってからは、もうご自身が物心ついてから。

伊藤:そうですね、小学校2年生ぐらいからじゃないですか。

矢作:そのぐらいからですよね。
今こうやってお店のほうを切り盛りなさっているんですけれども、じゃあ、着物の変遷というか、世の中の移り変わりの中でずっとかかわっていらして、もうこの時代の移りが非常に分かるわけですよね。

伊藤:そうですね、実際に自分の手で、染めたり、洗い張りをしていましたからね。
小学校時代にはもう釜の火の番と仕上げと水洗ですね。ですから、そのころは忙しかったです。もう寝る暇もなくみんな働いていましたから。

矢作:家族総出でっていうことですね。

伊藤:そうですね、ほとんど家の中で全部仕上げていましたかね。
織りのほうは、以後、途中で結び糸や何かをやりかけまして、長浜と直接取引していた時期もありますけども、実際は呉服屋さんとはまた全然違う形態です。

矢作:そもそも伊藤さんとお付き合いするきっかけが、芭蕉布という、沖縄の喜如嘉にあります、今人間国宝になられている平良さんの織物で、芭蕉の葉っぱを、長いものじゃないですけれどもね。

伊藤:あれは、繊維を砕いて熱して、それからより掛けるんですよね。

矢作:より掛けるんですね。当時は物資がない時代であろうし、そういうものを一生懸命紡ぎながら手間暇かけたものを着ていたというのが当たり前の時代だったんでしょうけど。

伊藤:いや、国内ではもう沖縄のほうでも、あれはほとんど高価な方しか着られなかったような状態だったかもしれません。
その昔は野良着だったようですが。

矢作:価値観とすれば、今、織る人間がいないとか、あるいは物資自体がもうほとんどないということなのでしょうか。

伊藤:織る人間はいるんです。

矢作:いるんですか?

伊藤:若い人がいっぱいいます。糸を紡ぐ人がいない。糸をつくる人。

矢作:紡ぐ人がいない。

 

 

伊藤:大島でもよく言っていますけれども、絣を織る人がいないんだって。絣をしめる人がいないんです。 糸でしばって絣糸をつくるんです。それをほどいて今度織るんですけれども、そのしめる、その人がいない。芭蕉の場合でも一緒ですね。織る人はいるわけですが、 糸をつくる人がいない。

矢作:その織る人はいるんだけれども、そういう手間をかける人がいなくなった理由っていうのは、どういうふうにお考えですか。

伊藤:まず糸作りでは食っていけないことでしょうね。それと需要がなかったということでしょうか。

矢作:需要がないんだけれど、今金額が目玉が飛び出るほど高くなっているわけなんですけれども。

伊藤:はい。
僕がこういうことを言っていいのかどうかわかりませんが。流通がかなり昔と変わってきました。
例えば、野菜等は産直が出回るようになりましたが、あれどうして産直になるかってご存じですか。

矢作:価格を決めたり、それを精査する農協。その機関を通さなくなったっていうことですね。

伊藤:仲買の市場ってありますよね。
あれは普通、お百姓さんが持って行って、向こうが値段決めて、売れれば売れるんです。でも、売れないと返してきちゃいますよね。

矢作:はい。

伊藤:だからお百姓さんたちは、タダで持っていかないといけない。だからもうその手間とかも大変なんです。それよりも自分たちでも売ろうかということで、産直市場をつくるようになりました。
今の話とよく似ている仲買の話ですが、例えば芭蕉布。原価が100万そこそこだっていうのはちょっと高過ぎるんじゃないですかねって。

矢作:そうですね、価格はバラバラですが、例えば、ネット上の場合は個人売買になりますし、デパートで買ったときとか、いろいろ買う手段によって、場所によって違うっていうのは、今おっしゃったような、その流通の仕方が当然まったく違うわけです。

伊藤:そうですね。
私が言うのはちょっと問題があると思いますが、実際、一次的につくる側としては、本当はもっと安いのです。

矢作:分かります。私もいろいろな方のお話を聞き、着物の業界がどうしてこういうふうになったかというのは、その流通網とか、あとは伝統とかいうものの、守るというよりも、そこにちょっと変な言い方ですが、あぐらをかいてしまっていたという部分もあるということは、他からもよく聞く話です。

伊藤:そうですね。

矢作:話を芭蕉布に戻しますと、私は価格というよりも、いいものだなというのは分かるんです。

伊藤:はい。

矢作:今の時代、手間をかけずに、お金もかけずに、安い人件費の外国に持っていったほうがいいだろうという。そういう考え方になってくると、技術は必要なくなり、それに似たような素材を利用して本物ではなくてもOKになっているっていう現実もあります。

伊藤:確かにね、そういう面も、本来あるべきものが違うものに変わりつつあるということはあるかもしれませんね。

次のページへ...

Profile
第20回/対談のお相手は
伊藤 政一 氏


Tradition Japan
メトロポリス
Copyright(c) TraditionJapn.All Rights Reserved